聖夜に足を踏み外す Take care! お久しぶりですニューセレクト。 世の中右も左もクリスマスまっただ中。 そんな楽しい行事を黙って見過ごすような人では、この会社、勤まりません。
司会の加藤と蝸牛の二人が叫ぶと、 「今日は日頃の憂さ晴らしを兼ねて、ぱ〜っと騒ぎたいと思います!!」 そんな掛け声に「お〜っ!!!」と叫ぶ人々を見て、人事部長土方は呟く。 「お前らは常に憂さ晴らし状態だろうが」と。
そんな彼らがいる屋上には、中央に巨大なクリスマス・ツリーが設置され、 「まずは近藤社長のご挨拶から、どうぞ!!」
司会に紹介されて近藤がマイクを持つ。 「伊東部長ったら、すけべ〜〜〜〜っっ」 「はっはっはっは〜♪僕はキリストの再来さ〜〜〜っっ♪」
楽しげな声の方を見れば、腰巻き一枚の伊東が部下の
何はともあれ、ヤツが不審な行動をとらなければ安全安全…と その頃、斎藤は奇妙な行動をとる翡翠に目をとめていた。 「…その巨大な袋は何だ?」
彼が指さして尋ねたのは、翡翠が重たそうに引きずる巨大な白い袋。 「うふふふふ。後でのお楽しみですわっ」 「……あ、そう…」 にこやかに去っていく翡翠を見送りながら、斎藤は思った。 『あの袋…動いてなかったか?』と。
「ではこれより、社内大プレゼント交換大会を始めま〜〜〜〜〜っっす!!!」
司会の声で、また歓声が湧く。 「土方さんは何を用意したんだい?」 「あん?」
左之代から逃げてきた永倉が土方の手元を覗き込むと、 「おぉ〜奮発したね!」 「うちは女子社員が多いからな」 「気を遣うね〜」と永倉は笑ったが、内心苦笑を禁じえなかった。
何故なら、この会社のアイドル土方のプレゼントを狙う視線が、 「……何がおかしい?」 土方の眉間に皴が寄る。 「…い、いや。頑張れよ、土方部長」 永倉はそそくさとそこを離れた。 ちなみに彼の用意したプレゼントは、香水を装ったクロロホルムである。 「ダーリン!あなたのプレゼントもハートもゲットよ〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」
叫ぶ左之代の声を聞きながら、永倉は思った。 「では、番号一番の方はこちらへ〜〜〜っっ!!!」
加藤のアナウンスで前に踏み出たのは、人事部の瑞希と奈緒。 「じゃあ瑞希さんの用意したプレゼントから紹介しますね〜」 蝸牛が瑞希に呼びかけると、瑞希が照れながら巨大な袋を取りだした。 「これ、私が作った特製の…」 それは、実物大の土方写真パネルだった。 「ぶっっ」と思わず土方がワインを吹き出す。 「実は私のも…」と奈緒も照れながらプレゼントを出す。
それは、土方部長隠し撮り音声入り目覚まし時計だった。 「げふっっ」 と土方は危うく鼻からワインを飲むところだった。 「な、なんじゃありゃ!!?」
驚く土方のよそに、会場内の女性陣からは 「そ、そんなものが良いのか…!?」 ちょっと愕然とする土方の向こうで、永倉や斎藤は「やっぱりね」と呟いていた。
司会の声で、次々と人が前に出る。 「二番は秋葉さんと明々さんね♪」
二人がもじもじと差し出したのは次の通り。 「ちょ、ちょっと待てお前ら…っっ!!!」 土方のこめかみに青筋が浮かぶ。 「三番の方はどなたかな〜??」
次に出てきたのはりえと林原。 「四番はこちら!!」
それは一見すると何も持っていないように見える未織と氷雪の二人。 「五番さ〜ん?出番ですよ〜〜〜〜っ!?」
慌てて出てきたのはD×Iとリオの異色対決。
「…へぇ、土方部長ってこうゆうのご愛用なんですねぇ」 と 「嘘だ〜〜〜〜〜〜っっっ!!! ただの部屋の備品だ〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!」
そんな土方の悲鳴が響く中、司会が 「六番の出番ですよ〜〜〜〜っっ」 と先を進めた。 「私のは…これです」
そう言って姶良が差し出したのは、土方から採取した血液100CC! 「お、お、お前らは俺を殺す気か〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」 「その前に色々と気付くべきだったんじゃないですか、土方部長」
叫ぶ土方に、斎藤がしれっと呟いた。 斎藤が用意したのは、浪曲集CD20枚セットだった。 「し、渋い…」 と会場中から溜息が漏れる中、翡翠が出したのは例の白い袋。 「斎藤部長!絶対大切にするって誓って下さい!絶対ですよ!?」 「は?」 「誓ってくれなきゃあげませんっ!!!」
怒鳴る翡翠に、斎藤はとりあえず頷いて見せる。
「も〜〜〜〜〜〜っ!!? 一体何をするんですか!
神谷だった。 「斎藤部長…大切にしてね」とウィンクする翡翠に、斎藤が鼻血を噴いて倒れた。 「おやおや大変です、こちらでは経理部カップル誕生か〜〜〜〜っっ!?」 「ええっ!?」 司会の声に驚く神谷と倒れる斎藤はおいて、番号は次に進む。
「ヒヨコ番長ちゃんのお相手にって…あああ〜〜〜〜〜〜っっっ!!!?」
最初は大人しかったヒヨコ達だが、土方の愛猫・仔ポチの襲撃を受けて
そして、順番はめぐり、とうとう土方の番が訪れた。 「…伊東…」 がくぅっと土方が倒れる。 「やぁっ良かったよ、僕の相手が土方君で!さぁ、これを被っておくれ!!」 キリスト姿の伊東は、自分が被っていたイバラの冠を土方の頭に乗せた。 「あん?」 「これが、僕からのプレゼントだよ、土方君vv うふふふふ」
頭に乗せられた不器用な冠に、土方が手を伸ばそうとした。 「むむむ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」 「わっっ!?」 いきなり伊東が両手を合わせて唸りだすと、土方の頭を激痛が襲ったのである。 「部長!?」
瑞希達が慌てて駆け寄ろうとするが、ぶー子とチアキがそれを止める。 「今から僕が土方君に乗り移る様子をご覧いれよう!!」 「ええええ〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!?」 「僕そのものがプレゼントだよ、土方く〜〜〜〜〜んっ!!!」 「うわぁ〜〜〜っっ!!!」
驚く人々の前で、何やら拝んで力んでいる伊東と、頭を抱えて苦しむ土方。 「ぐぐぐぐぐぐぐ〜〜〜〜っ!!!」 唸る伊東の目が、どんどん白目に変わっていく。 「うが〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」 叫び苦しむ土方も白目に…はならずに、ぱっとイバラの冠を外してしまった。
ポロリと転がった冠に、一同の視線が釘付けになる。 「きゃ〜〜〜っっ!! 部長っ!?」 「やばっやばい!部長の魂が空を飛んでる〜〜〜〜〜っっ!!!」 ぶー子とチアキが叫ぶ中、土方は溜息を付きながら頭を軽く振った。 「ったく、毎度毎度ろくでもねぇことを…」
土方はそう呟くと、宙をさ迷っている白い煙(伊東の魂?)に向かって 「ああああっっ!!!?」 それは弧を描いて煙の中に飛び込むと、煙に包まれて宙をプワンプワンと飛んでいる。 「きゃ〜〜〜〜っっ伊東部長、それ頂戴〜〜〜〜〜っっ!!!」 「魂の分際でティファニーなんて生意気よ〜〜〜〜〜っっ!!!」 「寄越せ〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」
空飛ぶ伊東の魂・ティファニー付きを、女性社員が集団で追いかけていく。
「え?」 声をかけられて顏を上げると、そこにはお酒で顏を赤くした近藤の姿が。 「何だ、せっかく俺もプレゼントを用意したのに」 「プレゼント?」 「ああ」 ニヤリと笑う近藤に、土方は疲れ果てて言った。
「残念だが俺のプレゼントはあそこで宙に浮いているんだ。 るさ、と言いかけて土方は止まった。
先ほどの部下達の用意したプレゼントを見るかぎり、 「いや、俺は実家に帰る!もう年を越すまで実家に帰る!!!」 「そうなのか?」
不思議そうな顔をする近藤の横を、フラフラと土方が通りすぎる。 「お〜〜い!俺からのプレゼントだ、受け取れ〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」 そう言って近藤は、何かを空にばらまいたのである。 「え?」 「ええ? 何何?」 「何コレ…?」
いきなり社長自らばらまいた物を拾い上げ、不思議そうな顔をする社員達。
近藤の気持ちの良い絶叫に、土方の悲痛な絶叫が重なる。 「年の瀬に危ない事があったら、遠慮せず歳に助けを求めるんだぞ〜」 呑気に笑う近藤に、土方が慌てて掴みかかった。 「何考えてるんだ、近藤さん〜〜〜〜っっ!!!」 「何って、部下の安全の為だぞ、歳」 「俺の安全が脅かされるんだよ〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!!!」 「はっはっは!歳は皆に慕われてるからなぁ」 「あいつら全員犯罪者まがいのストーカーに近いんだよ〜〜〜〜〜っっ!!!」 「このぉ、歳は照れ屋さんだぁ」 話にならない。
「あっ部長!どちらに?」 「寮ですか〜? 実家ですか〜〜〜?」 楽しげに尋ねる声に、土方は怒鳴った。 「山に篭ってやる、馬鹿野郎〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!」 馬鹿野郎〜〜っとエコーを響かせて、土方は走り去って行った。
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