下着を買って旅に出よう!!
それでも世界は回ってる



クィーンヨシノブ号-それはかのタイタニックの現代版とも称される豪華客船。
まるで海に遊ぶ人魚の如く美しさで知られた、
世界に類を見ない超級のゴージャス船だ。
そんな夢の様な乗り物に、今ニューセレクトの社員全員が揃っていた。






「ああっこんな船で世界一周できるなんてっ!! 私死にそうっ」 と未織が倒れる。

「きゃっ!? ちょっ姶良さん、姶良さ〜〜んっ!!!!」

突然倒れた未織に驚いた桃が叫ぶと、林原の冷静な声が響いた。

「姶良なら船酔いで寝込んでるぞ?」

「ええっ!?」

未織を抱えた桃が林原の指し示す方を見ると、
確かにそこでは姶良を始め、奈緒や瑞希までもが倒れている。
それを氷雪がまるでナイチンゲールのごとく看護していた。
あちゃ〜と桃が頭を抱えた所へ、今度は一際元気な声が届く。

「ふふっ!せっかくの船旅なのに、前もって酔い止め薬位飲んでおかないとっ!!!」

「そうよね〜〜っ!ドレスアップもばっちりにしておかないとっ!!!」

見れば船の甲板上で、まるで中世の貴族の様なドレスを着込んだ
左之代とぴるぽるが孔雀の羽の扇子を振りながら笑っていた。

「何あの格好…」

確かに誰もが旅行とあって着飾ってはいたが…と
乗り合わせた全員が顏をしかめた。
その時。

「勘違いをするな〜〜〜〜〜〜っっ!!!!」

突然現れた土方と永倉が左之代とぴるぽると蹴り飛ばした。

「あ〜〜れ〜〜〜〜〜っっっ!!!!」

「一同!今回の旅行について説明するから集まれ!!!」

甲板から海へと落ちていく二人を無視して、土方が全員に呼びかけた。
恐るべき事実を全員に突きつけるべく。
その土方の脇で永倉がそっと下を覗き込むと、
海面では左之代とぴるぽるがドレスの重さで海に沈んでいくところだった。











「今回、ニューセレクト社商品を御購入頂いた方を抽選で
『豪華客船世界一周の旅に御招待』というキャンペーンをはった!が、
これは伊東の独断であり、我が社にそんな金は無いっ!!!」

ビシィっと叫んだ土方が船の舳先を示す。
するとそこには船に縛りつけられた伊東の姿があったではないか。

「ああ〜〜んっ!許しておくれよ土方く〜〜ん!!
君とタイタニックがしたかったんだよ〜〜〜っ!!!」

「タイタニックは沈むだろうが、縁起でもない事言うなボケ!」

「あふ〜〜んっ!! ロミオ〜〜〜〜〜〜っっ!!」

「…というわけで、やっちまったものはしょうがないから、旅行は用意した。そこで…」

もう伊東を無視する土方に、全員が
「何が『というわけ』なんだろう?」と思ったが口には出さなかった。

「これより2ヶ月かけてこの船で世界一周をする!君らにはその間
この船において乗務員をしてもらうので、そのつもりで!!!」

「えええっ!?」

「全員、着替えろ〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!」

鬼部長・土方の号令により、ニューセレクト社一丸となっての
豪華客船乗務員生活がここに始まったのであった。











どんぶらこっこと船は大海をゆく。
イギリスのセーラーさんのような制服に身を包んだ社員達は、
それぞれ部署ごとに仕事を請け負い広い船内を右へ左へ。
慣れない事に戸惑いながらも
和気あいあいと楽しむ一同を乗せて、船は波を掻き分ける。

「まもなく中国〜中国〜」

ピンポンパンポン♪という音楽に続いて流れたアナウンスに
シーツを運んでいた神谷が転ぶ。

「な、何ていうムードのないアナウンスっ」

「あら大変っ!神谷さんが倒れたわっ!!」

「はっ!?」

いきなり現れて叫んだ依吹に神谷が身構えた時、
依吹は物凄い素早さで斎藤を運んでくると、
いきなり倒れた神谷の上に突き飛ばしたのである。

「うわっ!?」

「きゃっっ!!?」

「さぁっ遠慮なくここでハネムーンを満喫して下さいっっ!!!」

「ちょっ!依吹さんったら…」

真っ赤に顏を染めて 「きゃぁっ」 と声を上げる依吹に、神谷が抗議の声を上げた。
その横でいきなりズズズズズ…という音がする。
「?」 と三人がその音の方を見ると…
一人の女性がお茶を啜りながらその様子を眺めていた。
その女性は三人と目が合うとニッコリと微笑む。

「だ、誰でしたっけ?」

神谷がたまらずに尋ねた。
すると、その人はニコニコと戸惑う事なく応えた。

「新しく人事部に入りました、リオと申します。え〜では報告をさせて頂きます」

「報告?」

リオはいきなり胸元から拡声器を持ちだすと、大声で叫んだ。

「土方部長へ報告〜〜っ!! 斎藤部長と神谷さんと依吹さんが
三角関係でサボってま〜〜〜っす!!!」

「ええええ〜〜〜〜〜っっ!!?」

どこにしまってたんだそんなものっ!?と何て言う事を叫ぶんだっ!!と驚く三人に、
更に驚くべき声が跳ね返ってくる。

「…斎藤・神谷・依吹は罰として夕飯抜き〜〜〜〜〜!!!」

…土方の声だった。

がく然とする三人を残して、
リオはニコニコと微笑ながらお辞儀をしてそこを去って行った。

中華料理の豪華ディナーをお客に配って、中国にサヨナラをする。
途中土方のペット(愛猫・仔ポチと愛ハムスターまめ)が
食事を盗んで捕まるというハプニングを経て、船はインドへ向かった。






「え〜インド〜インド〜お忘れ物のないようにお気を付け下さい〜」

気の抜けたアナウンスが告げた通り、船はインドへと辿りついていた。

「やっぱりアナウンス変だよ」と呟くのは舞美。

「つか、インドに上陸したいよ〜〜〜っ!!」

対して藤倉が叫ぶそこは、食料庫の一角。
営業部の面々は今、そこで船内レストランの材料の下準備をしているのである。

「まったく、世界一周って海の上だけならどこにいても一緒だって」

「本当よね〜。インドだったら象くらい見せろ〜〜〜〜っ!!」

がりがりとジャガイモを剥きながら叫ぶ林檎兄貴とおくら。
二人はさっきから一生懸命にジャガイモをむいているのだが…。

「何か全然ジャガイモ貯まらないんだけど?」

ん? と4人がジャガイモの籠を見た瞬間…4人ともに動きが止まる。
何とそこにいたのは………

「象…?」

「象だ…」

「ぞ、象ってデカ〜」

「つか、何で…ジャガイモ食べてるのよ?」

目の前に象がいた。
その象がバクバクとジャガイモを食べていく様を眺める4人に、
頭上から声がかかった。

「きゃ〜〜っ!ぴるぽるちゃんと泳いでたら、一足先にインドに着いちゃった!
だから象を連れてきたわよ、可愛いっ?」

「さ、左之代ちゃんっ!?」

驚いた視線の先にいたのは、象の上にまたがる左之代とぴるぽるの二人だった。
そして驚く4人の耳にまたもや驚く声が響く。

「リオから土方部長に報告しま〜す!
左之代さんとぴるぽるさんがワシントン条約に違反してま〜す!」

「はっ!?」

いきなり現れたリオに開いた口が塞がらない面々。
するとどこからか土方の声が届く。

「営業部は来週一週間トイレ掃除担当〜〜〜〜〜っっっ!!!!」

唖然とする人々を残して、またもやリオは消えて行った。






船がインドを出て(象も帰して)アフリカ過ぎる。
アフリカでは伊東が原住民にさらわれたが、とりあえず船は先を急ぐ。

「伊東部長ったら…お元気で」

「土方部長捕獲は私たちにお任せ下さいね」

チアキとぶー子が海に花を落とす最中、
クジラに乗った伊東が船を追いかけていたが、
あえて二人はそれを見殺しにした。
そしてそれにはリオも土方への報告を差し控えたと言う…。
伊東部長は今いずこ。






船はとうとうイギリスに到着する。

「紅茶の〜ベッカ○の〜霧の都の〜ビートルズの〜イギリス〜〜〜」

「アナウンス長いわっ!!!」

まったく船から降りられない生活に林原が叫ぶと、
各所からブーイングの嵐が巻き起こった。

「外出たい〜〜〜っっ!!!」

「イギリス観光したい〜〜〜っっ!!!」

「王子様に巡り合いたい〜〜〜っ!!!」

ブーブーと叫ぶ人事部社員の不満はリオを通じて土方に届いていた。

「まったくぎゃーぎゃー言いやがって」

土方は報告を聞くといきなり部屋で着替え始める。
そして彼は真っ白のタキシードに着替え終えると、
ブーイングをする部下達の前は降り立ったのである。

いきなり現れた美男子上司・土方に、
奈緒も瑞希も誰も彼もが頬を赤く染めて見入ってしまった。

「何か不満でもあったか?」

そうニッコリと流し目で微笑まれて、部下達の目がハートマークに変わる。

「い、いいえ、ぜ〜んぜん!私たち船旅大好きです〜〜〜っ!!!」

「ふっ、そうか?」

わざとらしく土方が髪をかき上げると、一同から黄色い歓声が上がった。
それを見ていた永倉や斎藤は 「せこい…」 と呆れる。
だが効果は覿面。部下達は先程までの不満は何処へやら。
すっかり張り切って仕事をする気になっていた。

「じゃあ、頑張ってくれ」

だが土方がそう言って去ろうとした瞬間だった。

「部長素敵〜〜〜〜っ!!!」

「愛してる〜〜〜〜っっ!!!」

「キスして〜〜〜〜〜っ!!!」

「抱いて〜〜〜っ!!!」

「うわっ!?」

いきなり野獣と化した部下達が土方に襲いかかったのである。
もう本能のみで土方の衣服をひん剥こうとする女性陣から土方は逃げた。




走って走って慌てて自室に飛び込むと、
「ふぅ…」 と息を吐いた彼の目にとんでもない物が飛び込んでくる。

「部長…お邪魔してます」

「ぶっっ!?」

土方のベッドにD×Iがいたのである…裸で。

「な、な、お前そこで何してやがるっ!!?」

「そりゃ僕は部長のヒモですから、お勤めをしに」

んふふふっと笑うD×Iに、クラクラと眩暈を覚えながら土方は怒鳴った。

「馬鹿野郎っ!! 早く服着て出てけっ!ここは紳士の国イギリスだぞっ!?」

「え〜嘘ですよ〜ここは自由の国アメリカ」

「何だとっっ!?」

ひょうひょうと笑うD×Iがカーテンを開けると、
確かに窓の向こうには自由の女神が。
えっ!? と驚く土方の頭上にピンポンパンポン♪と音声が流れる。

「え〜アメリカ〜アメリカ〜黒船ペリーのアメリカ〜」

「早っ!!!」

げっと驚く土方に、更に追い討ちをかける声が
船内に響き渡ったのはその時だった。











「リオより報告しま〜す!土方部長は皆を働かせておいて、
自分はお部屋に男を連れ込んでま〜っす!!!」






「リ、リオ!?」

思わず声に対して頭上を見上げた土方の部屋の扉がバーンと開く。
するとそこにはニューセレクト社員達の
鬼の形相で部屋を覗き込む顏があった。

「…あ、いや、違うんだ、これは…待てっ」

「ひ・じ・か・た・ぶ・ちょ〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!」

一斉に批難の怒声が上がると、
いきなり彼女(一部彼)達は土方の部屋になだれ込んできた。
そして土方に対して、
小突くつねるひっぱたく殴る服を脱がせる触るまさぐるキスする…と
これまでの不満を一気に爆発させたのである。

「や、や、やめろ〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!!」

土方の必死の悲鳴が響き渡る。
だが、あまりの部下達の勢いに、
永倉も斎藤も山南も井上もの誰も彼もが手を合わせて「合掌」していた。
その隣ではリオが嬉しそうに、土方の不幸な姿を眺めている。

「ああ、満足っ」

そう言って笑いながら…。




暫くして部下の圧力に負けた土方が窓を突き破る。

「うわぁあ〜〜〜〜〜〜っっっ!!!?」

「ああっ!? 部長っ!!?」

バリーンっと弾け飛ぶガラスが、
光に煌めいて土方と一緒にバラバラと海に落下していく。
一同は窓から身を乗りだして、土方が落下していく様を見つめた。

「ああ、部長が…」 と誰かが絶望的な声を上げたその時。

「ひ〜〜じ〜〜か〜〜た〜〜〜くぅ〜〜〜〜んっ!!!!」

「あ!伊東部長!?」

誰かが遠くを指さす。
すると海の向こうから、シャチに乗った伊東が
こちらに向かって走って(?)くるではないか。

驚く人々の眼下で、伊東は落下してきた土方をナイスキャッチした。

「おおおお〜〜〜〜〜っっ!!!!」

思わず歓声を上げる人々。

「い、伊東っ!?」

「土方君、無事だったかい?」

伊東に抱きかかえられて土方の顔が青ざめる。
そんな土方に 「んっふっふっふっふ」 と笑いながら、伊東は言った。

「さぁ、二人きりで旅にでようじゃないか!」 と。

「何だと!?」

「あ〜〜はっはっはっはっは!!!」

伊東の高笑いが響く中、シャチは二人を乗せて船から遠ざかる。
そしてあっという間にその姿が水平線の彼方に消えた頃…
アナウンスが流れた。

「日本〜日本〜やっぱり日本が一番だね〜〜〜〜♪」






こうしてニューセレクト御一行様世界一周の旅は終わった。
約二名の行方不明者をだしながら…

「さぁ、明日から仕事だぞ〜」 と近藤社長の懐かしい声が、
社員の心を慰める風となった。

イルカに乗ったサムライ♪
来夢

> ニューセレクト人事部 D×I(♂・21)航海日誌

今回は部長と楽しい船旅を満喫できましたv
入社数日目にして世界旅行を(しかも土方部長と)
素敵に楽しませてもらえるなんて、
僕はなんて幸せ者なんだろう…v
だけど伊東部長に土方さんをさらわれてしまった(+◆+)
でも大丈夫!僕の部長はタフさっv
きっと次に出社した時には戻ってこられるよ★

バスッ!!ぽたた…←日誌に血が滴る

はうっ…脳天に矢がっ( ̄■ ̄;)―≪≪

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